中辺路町高原〈1〉山上の集落
里のみち
熊野の道は里を結びながら、山中を迷路のようにめぐっています。古老たちの語りや歌、伝説に導かれながら行く里の道。訪ねたのは大瀬(おおぜ)・高原(たかはら)の集落と、兵生(ひょうぜ)の廃村です。
田辺方面から国道311号線を富田川に沿って遡り、栗須川小学校を過ぎて「原之瀬橋北詰」を右折。ここで橋を渡り、道なりに山を登っていく。くねくねした道だが、対向車が来てもギリギリでかわせるので大丈夫。国道から高原(たかはら)までは車なら10分ぐらい。
熊野古道を歩いてくる場合は滝尻王子から約2時間、逆ルートなら近露王子から約4時間で、こんな山のてっぺん。標高330メートルに位置する山上集落で、雲海の里として知られているところ。
初めて訪れた人は、なんでこんな山の上に!?とびっくりするはずだが、このあたりはかつての宿場町。集落を抜けていく熊野古道は、山間の村々を結ぶメインストリートだったわけで、熊野詣ではもちろん、地元の人たちの生活道としても盛んに利用されてきた。古道の左右には旅籠(はたご)が軒を連ね、大正時代まで営業されていたそうだ。
まずは高原の氏神様、高原熊野神社に参拝。室町時代の形式を残す本殿は中辺路沿いで最古の建物だという。境内にそびえる巨木の神々しいこと。
休憩所あたりから、少し下った棚田に水車が見える。この水車を紹介する新聞記事が、休憩所の壁に貼られていた。日付を見ると、なんと昭和21年7月。その、67年前の新聞記事によると、「昭和初期、棚田が広がる高原地区には水車が5つあったという。戦後、発電機の普及でなくなったが半世紀ぶりに復活させた」と。
これが水車の音。
集落のあちこちには小さな祠があって、きれいなお花が供えられていた。
気をつけて見ていると、祠の中にはそれぞれに異なるご詠歌が記されている。ご詠歌って、よく知らないのだけれど、一体誰が、どんなふうに歌うものなのだろう。