天空の里の物語「中辺路町高原」
里のみち
熊野の道は里を結びながら、山中を迷路のようにめぐっています。古老たちの語りや歌、伝説に導かれながら行く里の道。訪ねたのは大瀬(おおぜ)・高原(たかはら)の集落と、兵生(ひょうぜ)の廃村です。
滝尻王子から険しい峠を越えて熊野古道を歩いていくと、急に視界がひらけて道は里へと入っていきます。雲海で知られる山上に、ぽっかり広がる集落の名は高原(たかはら)。斜面に散らばる家々は46軒で、住民のほとんどは高齢者だそうです。
気になったのは、あちこちに祀られた可愛らしいお地蔵さん。祠にはそれぞれ異なるご詠歌が掲げられていました。「いつ、誰が歌っているんだろう」と思いながら通り過ぎたのですが、後日、地域の方々に色々と教えてもらうことができました。
高原の人々は古くから、熊野詣での途中に行き倒れた人や、身寄りのない人などを手厚く供養してきたそうです。女性たちが歌ってくださったご詠歌も、やさしい祈りの声でした。