十丈峠のダル
ダルは飢えた人のあるところで会うという。
おばやんのいとこね、富里から今の十丈へ来たらね、腹へったゆうで、
「めし食え」ちゅうて、やったら、わっぱへ四杯も食ったと。
わっぱゆうたらおひつみたいなものやな。
三合は入るな。それ四杯より食うた。
「もういいのか」ゆうたら、
「おら、ひもじゅうて動けん」て、ゆうた。
そこでまた別の人が、ご飯炊いて持って行ったですよ。
それでもなおらんです。
やっぱりこのへんにダルっていうておるんだけど、
餓死した人やなんか、みんなこういう状態になるんだろ、
ああいうとこで。
餓死した人のところにダルは寄ってくるんやろ。
ダルに憑かれたら、ごはん粒を残しておいたのを、
今ゆうたようにお腹がすいたりしたら、ごはん食べたらよい。