山の神
この奥に道湯川の集落跡にのぼる道がある。五本松へ上って、下っていく道やけどね。
そこで山仕事しとった。重ちゃんやけどね。多禰重次(たねしげじ)というんや、同級生でね。
いまは、もう死んでしまいました。
そしたら、青い着物着た人二人、赤い着物着た人一人、三人に出会うて、青い着物着た人も女や、赤い着物着た人も女や。
赤い着物の人、「ここから向こういったらあかんのえ」って、通してくれんのや。
あとからみてもろうたわけや。そや、祈祷師にな。そしたら「青い着物着とった人は、たしかにおまはんに害をする人や、害を与えるものだったんや」
赤い着物着とった女の人が、けっきょく山の神さんだった。青い人らのいうようにしたら、あの人はどこへ連れていかれたやら、どうなったかわからんとこだった。もう四〇年くらい前のことや。