熊野本宮大社 湯登神事〈1〉

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熊野本宮大社の例大祭は例年、4月15日。それに先だって13日に、浄めのための湯登(ゆのぼり)神事が行われる。
午前9時、神職、稚児、付き人(親)、熊野修験者、氏子総代の一行が、熊野本宮大社を出発して湯の峯に向かう。湯の峯では旅館の女将さんや、お坊さん、自治会長さんなど集落の人々が十人ほど集まって、峠を見上げながら到着を待っていた。

一行がやって来た。出迎えるのは集落の人たちばかりで、ほのぼのと和やかな雰囲気。よそから来たようなのはカメラを抱えた数人だけで、神事を目当てに来た観光客もあまり目につかなかった。
見物人に見せるための都市祭礼ではなく、見せることを意識していないお祭り。期待通りの始まり方で、かなり心ときめく。

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行列の先頭を歩く神職さんと、出迎えた和尚さんがにこやかに挨拶を交わし、みなさん満面の笑顔だ。山間の谷間に横笛や太鼓の素朴な音色がしっとりと響く。


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父親の肩に乗ってきょとんとしている子どもたち。おでこには「大」の朱文字。大きくなるまで健康で、との願いが込められているそうだ。
稚児は2,3歳の男子で、例大祭の間は地面におろしてはならない。稚児の頭には、熊野の神が宿るから。

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行列は、湯の峯の旅館「あづまや」に入っていった。あづまやさんと伊勢屋さんが、一年ごとに当家を務めるならわしだとか。
一行はここで休憩し、温泉に入って、体を浄める。温泉粥の接待も受ける。粥を食べ、湯の霊力を体に取り込むのだ。

旅館の前で待つことおよそ3時間、何やらあたりが騒がしくなってきた。うぎゃうぎゃと泣き声が聞こえる。普通だったらお昼寝の時間だし、朝も早かったしで、たぶん寝ていたのだろう。
再び肩に乗せられて怒るのも当たり前かも……。
でも肩車で歩き出したら、みなさんのご機嫌もなおったみたい。(と、思ったんだが…)

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投稿日:2013年4月19日
カテゴリー:みちとおと取材記
文:北浦雅子