なかへち散策の拠点「かめや」
友人たちと三人で熊野に一泊旅行。「熊野おもしろいで。また案内するわ」と言いっぱなしで一年以上も知らん顔していたのだが、ようやく約束を果たすことに。
最初に立ち寄ったのは「ちかの平安の郷 かめや」さん。近露(ちかつゆ)の集落にある、江戸時代の旅籠みたいな古民家カフェだ。座敷に置かれたアンティークな机やざぶとんも素朴で可愛らしく「テンションあがるわぁ」と友人たちも喜ぶ。
ランチにいただいたのは、鹿カツ黒カレー850円(土日限定メニュー)。熊野の鹿肉を使ったジビエ料理だ。カツはもちろん、ルーの中にも鹿肉がけっこうたっぷり入っている。鹿肉は脂が少なくあっさりしているが旨味がある。スパイスを焦がした黒カレーの深みと絡んで、上品でありつつ適度にワイルド。鹿肉ファンはもちろん、ジビエ初心者にもおすすめできます。
店内の棚には、オーガニックの石鹸やシャンプーなどが並ぶ。この集落は日置川の最上流部に位置するため、「川を汚さないように暮らしたい」と考える若い住民たちも少なくない。歴史ある古道をきちんと守っていこうとすると、暮らしや食、環境を考えることにつながっていく。世界遺産をただアピールして観光客を呼び込むのではなく、足もとを見つめ、思考してゆこうとする方向性。とってつけたような類いの、ありがちな観光振興を目指していないところが魅力的だし共感できる。
「かめや」で手作りの案内地図をもらい、熊野古道沿いを散策することにした。下の写真は巨木に囲まれた継桜(つぎざくら)王子。そこから野中の清水に少し下って、澄んだ泉に赤いモミジが映るのをうっとりと眺める。「熊野はスギやヒノキの植林が多いので、紅葉の季節は残念」と思っていたけれど、意外にあちこちで紅葉が楽しめた。もし、すべての山が自然林だったら…と想像すると、それはやはり残念なのだが。
ちょっとくたびれたので「かめや」に戻って、コーヒーをテイクアウトさせてもらった。天気もよくて暖かい日だったので、外で飲むとまた格別の味わい。
ちなみに、おやつは途中の店で買った「よもぎういろう」と「よもぎあべかわ」。
これらのお菓子を、私は密かに”中辺路スイーツ”と呼んで恋い慕っているし、見つけた時は必ず買う。(大量には作っていないようなので、いつもあるとは限らない)地元の安心な素材で、手間ひまかけて作られていることが、一度食べたらわかるかもよ。
牛馬童子の石仏を経て、樹齢400年を超える福定の大銀杏を目指す。
黄色いモコモコの大銀杏が目の前に現れた時、彼女たちが驚いて歓声を上げたので私は鼻が高い。出世した親戚の長老を友達に見せびらかしているような気持ち、に近いかな。
〈つづく〉
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